日本の高齢者は健康度世界一!:195か国の比較で平均より10歳以上若いことが明らかに
195か国を比較して日本の高齢者が世界一元気であることを示唆する論文が、Lancet Public Health誌に掲載されました。
世界中でHealthy Ageing(健康な高齢化)が政策目標となっている中で、単純に平均寿命を比較するのではなく、「病気でない健康な期間がどれくらいあるか」を加味して比較した研究になります。
研究の方法
この研究は、the Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study (GDB) 2017という、アメリカ・ワシントン大学の研究所が公開しているデータを基に行われました。
日本を含む195か国の1990年から2017年のデータを使用しています。
この研究の目的は、各国の高齢者の「病気でない健康な期間がどれくらいあるか」を計算し、健康度を比較することにあります。
筆者らはまず、加齢と共に発生率が急激に上昇する92の疾病を特定しました。
これらの疾病には、
などが含まれています。
次に、これらの疾病による障害調整生命年(DALYs; disability-adjusted life-years)を計算します。
病気の人が増えると、DALYsも上がります。つまり、各疾病によるDALYsの合計は、その国の高齢化に伴う疾病よる損失を表す指標となります。
ただし、高齢化率は国によって異なるため、単純にDALYsの合計を比較することは出来ません。そこで筆者らは、65歳時点のDALYsの世界平均を取って、各国において何歳で世界の65歳の平均得点に達するかを比較することにしました。
世界平均に到達する年齢が高ければ高いほど、その国の高齢者はいつまでも元気で、健康度は高いということになります。
研究結果
世界の平均的な65歳との比較
研究対象となった195か国において、それぞれ何歳で世界の65歳の平均に達するのかを表した図が以下です。
この研究によると、日本の76歳は世界の65歳に匹敵する健康度を誇っており、世界で一番若いことが分かりました。日本の高齢者は、世界の平均的な高齢者よりも健康面で10歳以上若いということになります。
アメリカは平均よりもちょっと上、中国は平均くらい、ロシアは先進国の中ではかなり下の方です。最下位はパプアニューギニアの45.6歳で、40代半ばにして65歳と同じくらいの健康度ということです。
1990年から2017年の変化
下の図は、1990年から2017年の期間でどれくらいDALYsが減少(健康度が上昇)したかを表したものです。
全ての地域でDALYsが減少していることが分かります。
しかし、社会経済状態が良い国 (High SDI; sociodemographic index) や高所得国 (High income)でDALYsが大きく減少しているのに対し、中低所得の国はそうでもありません。
また、筆者らはこれらの変化が何によってもたらされたのか、以下4つの要因に分解しています。
- 成人の人口増 (Population size)
- 人口構造の高齢化 (Population age)
- 加齢に伴う疾病の有病率 (Prevalence)
- 加齢に伴う疾病の死亡率・深刻度 (Case fatality and disease severity)
上の図によると、1. 成人の人口増 (Population size)(DALYsを増やす方向に寄与)と4. 加齢に伴う疾病の死亡率・深刻度 (Case fatality and disease severity)(DALYsを減らす方向に寄与)の影響が大きそうです。
まとめ
この研究では、日本の高齢者が健康面で世界一であることが示唆されました。あくまでDALYsという指標で評価した場合の結果で、用いる指標や手法によっては順位に変動があることは留意が必要です。
日本の高齢者がなぜ健康なのか、ということについてはさまざまな説があります。
また、この30年弱で先進国では健康度が大きく上昇したものの、途上国はやや遅れており、「健康格差」が世界で拡がっていることも明らかになりました。
日本の知見を世界に発信することで、世界中の高齢者が健康で豊かな生活を送れるよう貢献できるかもしれません。